医療ダイエットを受ける方の動機として多いもののひとつに、「部分痩せをしたい」というものがあります。
部分痩せという言葉は広く使われる一方で、お腹だけ、二の腕だけといった様に落としたい部分だけの脂肪を落とせたことがあるという方は少ないのではないでしょうか。
実はカロリーをマイナスにする一般的なダイエット方法では、部分痩せはできないとされています。
その点、医療ダイエットであれば落としたい部位の脂肪だけを外部からの医療施術によって落とすことができるため、部分痩せしたい方に医療ダイエットは非常におすすめです。
この記事では医療ダイエットであれば部分痩せができる理由や部分痩せを実現するおすすめの医療ダイエット施術、どんな方におすすめかなどを詳しく解説していきます。
前提:一般的なダイエットでは部分痩せはできない
体脂肪は全身まんべんなく落ちていく
通常のダイエット方法、つまり食事制限や運動によって摂取カロリーよりも消費カロリーを大きくすることで減量を目指す方法では、皮下脂肪や内臓脂肪は一律に全身からまんべんなく落ちていきます。
姿勢の改善によって肉の付き方が変わったり、元々運動やトレーニングをしていた人がやめることで筋肉が落ちて細くなったりというケースは有りえますが、一般的なダイエットでは部分痩せを行うことはできません。
腹筋をすればお腹が痩せる?
「お腹やせ腹筋エクササイズ」といった様なダイエット方法がSNSなどでバズっているのを見たことがある方も多いかもしれませんが、先述のとおり、人体は動かした部位の脂肪だけが落ちるようにはできていません。
運動によって期待できるのはエネルギーの消費によってカロリー収支がマイナスになるのをサポートすることなので、腹筋をしたからお腹の贅肉が落ちるということはありません。
むしろ、腹筋運動よりもスクワットの方が消費カロリーが圧倒的に大きいため、スクワットをした方がお腹が痩せるケースすらあります。
もちろんボディメイクの観点では筋肉の形をよくしたりといったアプローチは有効ですが、体脂肪率が高く筋肉が脂肪に埋もれている段階ではこの様な変化が顕著にボディラインにあらわれることはありません。
例外的に、かなりの強度で長期的に特定部位のみを使った場合には、脂肪が多く落ちる部位が存在する可能性を示唆する研究は存在します。
ただしこれは例えば競輪選手は脚の脂肪が少ない傾向があるといった様に、一般的なダイエットの範疇を遥かに超えた次元の話ですし、あくまで痩せる中で多少特定部位の脂肪が落ちやすくなる可能性がある程度の話なので、参考にはなりづらいでしょう。
マッサージやストレッチでサイズダウンするのは部分痩せではないのか?
エステに行った後や、念入りにストレッチやヨガなどを行った後には特定部位のサイズダウンを実感できることがあります。
しかしこれは脂肪が落ちているわけではなく、リンパの流れや血流が改善され、むくみが解消されることによって起こるもので、あくまで一時的に細くなっているだけです。
脂肪が付きやすい/落ちやすい部位はある
部分痩せはできないはずなのに、痩せやすい部分と太りやすい部分があると思った方もいらっしゃるかもしれません。
確かに人によっては特定の部位だけ脂肪が落ちやすかったり、反対に少し太っただけで肉たたくさんついてしまったりする部位が存在することはあります。
ただしこれは骨格や体質によるもで、ダイエットのやり方によるものではないので、通常のダイエットで部分痩せができることの根拠にはなりません。
医療ダイエットなら部分痩せができる
通常のダイエット方法では部分的に痩せることは不可能ですが、医療ダイエットであれば部分痩せが可能です。
それも全身的なダイエットは行わずとも、特定部位のみの脂肪を取るといったこともできます。
その理由やアプローチ方法を詳しく見ていきましょう。
ピンポイントで脂肪細胞を減らすことができるため
脂肪細胞とは中性脂肪をエネルギーとして溜め込む役割を果たす細胞で、これが膨らんだり萎んだりすることで人は太ったり痩せたりします。
摂取するカロリー、つまりエネルギーを減らすことで脂肪細胞を萎ませるのが一般的なダイエットですが、医療ダイエットの場合、この脂肪細胞そのものを身体から取り除いてしまうことができるのです。
また脂肪細胞の数が減るということは、それ以降全体的に太った場合にもその部位は大きくなる脂肪細胞の数そのものが少ないため、リバウンドしづらいというメリットも得ることができます。
部分痩せを実現する医療ダイエット施術
脂肪細胞を減少させることで部分痩せを実現する医療ダイエット施術には、大きく「脂肪冷却」「脂肪溶解注射」「脂肪吸引」の3つがあります。
それぞれ異なったメリット・デメリットを持つため、具体的な施術内容や効果について詳しく解説します。
脂肪冷却
脂肪冷却とはその名の通り、脂肪細胞を冷やすことで死滅(アポトーシス)させる施術です。
水が0℃で凍ることは多くの方がご存知かと思いますが、脂肪はこれよりも高い4℃という氷点で凍結が始まります。
そのため専用の脂肪冷却機器で脂肪を吸引しながら4℃まで冷やすことで、血液や他の組織にはダメージを与えず脂肪細胞のみを凍らせることができます。
脂肪冷却では一度に施術部位の約20%程度の脂肪細胞を凍らせることができ、破壊された脂肪細胞はゆっくりと時間をかけて徐々に吸収され、1~2ヶ月間程度かけて体外に排出されます。
メリットとしてはオペがないため身体に傷跡などが残らず、ダウンタイムも1週間~長くて1ヶ月程度の赤み・軽微な内出血とかなり軽いことです。
一方でデメリットは、効果が現れるまでにタイムラグがあることと、一度に減らせる脂肪細胞が20%程度なので大きな効果を期待したい場合には2~3回施術を行う必要があるという点です。
多少時間がかかってもなるべくリスクやダウンタイムを抑えて部分痩せしたい方には非常におすすめの施術です。
脂肪溶解注射
脂肪溶解注射とは、植物由来の天然成分やデオキシコール酸、フォスファチジルコリンなどの脂肪溶解成分を注入することで脂肪細胞を破壊する施術です。
脂肪溶解注射には様々な種類があり、含まれる成分によって効果の度合いや副作用、ダウンタイムなどは異なってきます。
選び方としては、脂肪溶解作用の強いデオキシコール酸を一定以上の濃度含むものの中から、費用や効果、副作用リスクなどから選ぶと良いでしょう。
フェイスラインの部分痩せあればデオキシコール酸を0.5%含むカベリンが十分な効果を持ちながら費用も安めでダウンタイムも2~3日程度と手軽なことから人気です。
さらに効果を上げたい場合、デオキシコール酸を0.8%含むチンセラプラスや1%含むFatx coreなどもおすすめですが、ダウンタイムも1~2週間程度必要になってきます。
またボディの部分痩せを行いたい場合には、デオキシコール酸を2.4%と高濃度で含むリバイタルセルフォームなどが人気です。
大まかなメリット・デメリットは脂肪冷却と似ていますが、脂肪溶解注射はより細かく注入ができるため顔の輪郭のデザインなどにも適しています。
注射に抵抗がなく、なるべく安全に部分痩せがしたい場合には脂肪冷却と並んで有力な選択肢となるでしょう。
脂肪吸引
脂肪吸引は脂肪を減らしたい部位に直接カニューレと呼ばれる吸引管を挿入し、脂肪を吸い出すことで部分痩せを行う施術です。
医師が注射器の押し子を引くことで脂肪を吸引するシリンジ法と、カニューレに陰圧(吸い出す力)を作り出すモーターを取り付けて脂肪を吸い出す方法の2つがあります。
前者は細かな調整ができる一方で、左右対称にできるか、しっかり脂肪を取り切れるかなどは医師の技術に左右される部分が大きくなります。
後者は超音波によって脂肪細胞のみを液状化し組織をなるべく傷つけずに多くの脂肪を除去できるベイザー脂肪吸引や、脂肪を振動させて粒状にすることで顔や胸への脂肪注入に適した吸引ができるアキーセル脂肪吸引など、異なる特徴を持った施術方法が存在します。
脂肪吸引は一度に多くの脂肪を確実に取れるというメリットがある一方で、痛みが大きい、ダウンタイムが長い、傷や色素沈着が残る可能性がある、失敗すると脂肪がボコボコしてしまう可能性があるなどのデメリットがあり、効果と引き換えにリスクも高い施術になります。
リスクを承知で大掛かりな美容オペを受けてでも即効性と確実性を求めて部分痩せしたい場合にはおすすめです。
その他
脂肪細胞は一定以上の温度で一定時間加熱することで死滅する性質があるため、ボディハイフやヴァンキッシュMEといった熱エネルギーを与える施術でも脂肪細胞の減少が期待できる可能性があります。
医療ダイエットで部分痩せしたい場合の注意点
全体的に太っている場合は効果を実感しづらい
脂肪冷却を始めとする脂肪細胞を減少させる施術には、減量効果はほとんどありません。
一度にもっとも多くの脂肪を除去できる脂肪吸引であっても、一度の施術で吸引できる体脂肪の量は体重の3~5%程度と言われています。
例えば体重70kg体脂肪率40%といったかなり太っている方の場合、体脂肪だけで28kgあるため、5%の3.5%を取ったとしても見た目への影響はほとんどありません。
もちろんこの3.5kgというのはかなりのリスクやダウンタイムをい覚悟した上で大掛かりなオペを行ったとして取れる脂肪の量なので、常識的な施術ではさらに減らせる脂肪細胞の量は少なくなります。
BMI、体脂肪率ともに高く全体的に太っている方の場合、まず全身的なダイエットを行った上で気になる部分に部分痩せ施術を行うという順番がおすすめです。
施術によっては効果が出るまでに時間がかかる
基本的に、脂肪吸引以外の脂肪細胞を減らす施術は、効果を実感できるまでにある程度の期間がかかり、またはっきりとした効果が現れるまでには複数回の施術が必要になる場合もあります。
脂肪冷却の場合、効果があらわれるまでの期間は2ヶ月前後かかり、施術回数は1~3回程度必要です。
脂肪溶解注射は種類にもよりますが、1週間から1ヶ月の間隔を空けて1~5回程度施術が必要になります。
施術が完成するまで、長い方ですと半年程度かかるため、リスクや副作用を抑えながらじっくり脂肪冷却・脂肪溶解注射を行うか、リスクやダウンタイム覚悟で脂肪吸引を行うかのどちらかになるでしょう。
ダウンタイムや副作用の可能性がある
医療ダイエットはほぼ確実に部分痩せができる唯一ともいえるダイエット法ですが、医療施術である以上、ダウンタイムや副作用のリスクが必ず存在します。
脂肪冷却や脂肪溶解注射の場合、ダウンタイムは1週間~長くても1ヶ月程度で副作用も軽い腫れや内出血など軽微なものがほとんどで、日常生活に支障なく施術を受けられる可能性が高いでしょう。
(ただし、Fatx coreなど高濃度の溶解成分が含まれる脂肪溶解注射は大きな腫れが1ヶ月近く続く場合などもあります)
脂肪吸引は大掛かりな施術になる分ダウンタイム・副作用ともに強い傾向があります。
施術部位や取る脂肪の量にもよりますが、痛み、腫れ、内出血、むくみといった症状は1~2週間程度続き、皮膚が突っ張る拘縮や皮膚の色ムラは3ヶ月以上続くこともあります。
リスクを抑えるためには十分な症例実績と技量を持ったドクターに担当してもらい、万が一のことがあった際にもアフターフォローできる態勢が整ったクリニックを選ぶことが重要です。
医療ダイエットによる部分痩せが効果的な人
太っていない状態でも脂肪が気になる部位がある人
脂肪冷却を始めとする医療ダイエットの施術はピンポイントで脂肪細胞を減らすことができる施術です。
そのため、全体的にはそこまで太っていないのに二の腕や下腹、お尻や太ももなど特定の部分のみの脂肪が多く、だらしなく見えてしまうといった方には絶大な効果を発揮します。
実際、こういった肉の付き方をするのは骨格や体質による問題のケースが多いため、BMIや体脂肪率を平均以下まで落としてもそこだけ脂肪が落ちないといったことも多いため、ぜひ部分痩せ施術を検討してみてください。
反対に、全身が太っている様な場合には部分痩せ施術には減量効果がほとんどないため、大きな効果は実感しづらい可能性が高くなります。
その様な場合にはまずは部分痩せより先に全身的なダイエットから取り組み始めることをおすすめします。
加齢によって太っていないのにスタイルが崩れてきた人
一般的に歳をとると代謝の低下やホルモンの影響で太りやすくなりますが、それとは別に筋力の低下や姿勢・骨格の歪みなどにより、若い時にはつかなかった部分に脂肪がつきやすくなることがあります。
体重や体脂肪率はそこまで変わっていないのに、歳をとる毎に目立つ部分に肉が付き始めて見た目の印象がだらしなくなってきたという方は多いのではないでしょうか。
この様なケースでも部分痩せの施術が適応になり、手軽にスタイルをすっきりさせられる可能性があります。
医療ダイエットによる部分痩せの効果を実感しづらい人
体脂肪率とBMIが高く全身太っている人

こちらの画像はダイエットによる脂肪量の変化の一例です。
腹部の脂肪が多いタイプの体型ですが、BMI・体脂肪率自体も高くお腹には約10kgもの脂肪がついていました。
このケースではダイエットによって約5キロお腹の脂肪を落として標準の脂肪量になることができましたが、部分痩せの施術によって5キロもの脂肪を減らすことは現実的ではありません。
このケースの場合、脂肪吸引であれば一度の施術で1~2キロ程度取れる可能性がありますが、10キロが8~9キロになったところで見た目に大きな変化は現れないため、肥満体型の場合にはまず全身のダイエットが優先事項となります。
筋肉太りしている人
脂肪冷却・脂肪溶解注射・脂肪吸引はいずれも脂肪細胞へアプローチすることで部分的なサイズダウンを目指す施術です。
スポーツをやっていて脚や腕がたくましいのが気になるという方は少なくありませんが、これらの施術で筋肉を減らすことはできないため、筋肉太りの部分痩せは適応外となります。
筋肉太り解消のためにはその部位の筋肉になるべく高い負荷を与えないようにして、発達した筋肉が落とす必要があります。
適度な筋肉量まで落としたい部位はなるべく使わないか有酸素運動のみ行うなどすると良いでしょう。
全身の筋肉が落ちてしまうと太りやすい体質になるため、他の部位は適度にトレーニングを行いつつタンパク質もしっかり摂るなどして代謝を維持できると良いでしょう。