お腹や太もも、二の腕、お尻などの脂肪がつきやすい部位の皮膚表面がオレンジの皮の様にボコボコになったものをセルライトと呼びます。
セルライトは女性にできやすく、健康上の問題を引き起こすものではありませんが見た目の問題からセルライトにお悩みの人も少なくないかもしれません。
この記事では、セルライトができる原因と解消方法を医学的な観点から解説します。
そもそもセルライトができる原因は?
多くの女性を悩ませるセルライトですが、そもそもセルライトはどういった原理でできるのでしょうか。
実は医学的にもセルライトの原因は分かっていない
実はセルライトがどの様な仕組みで発生するのか、医学的にもまだはっきりとしたことは分かっていないのです。
そもそもセルライトという言葉は、主に美容やエステの分野で使われる言葉で医学用語ではありません。
近年ではセルライトについて取り上げる医学論文も増え、研究も行われ始めていますが、セルライトについて完全に解明はされていないという状況です。
セルライトの原因についての可能性としては、以下の様なものが考えられています。
- 肥大した脂肪脂肪に毛細血管が圧迫されて起こるうっ血や浮腫み
- それにともなう周辺組織の線維化(脂肪が増えた部位が硬くなる)
つまり、太って脂肪が大きくなることで血流が悪くなってうっ血や浮腫みが起こり、同時にその周辺が硬くなってしまうことで表面にボコボコが現れるのではないかと考えられているのです。
ちなみに、セルライトについては誤った認識も多く、「脂肪細胞と老廃物が混ざったもの」などと説明されることもありますが、これは間違いです。
セルライトがある部分を切開しても肥大した脂肪細胞があるだけで、組織自体に変性は起こっていません。
セルライトに関してはエステサロンやセルフケア用品のマーケティングのために根拠のない情報が溢れており、そのために「脂肪を揉みほぐして潰す」といった危険な治療法などが紹介されることもあるため鵜呑みにしないよう注意してください。
セルライトは男性より女性にできやすい
セルライトは女性に多く見られ、人種や年代にもよりますが思春期以降の女性の80~90%に程度の差こそあれセルライトがあるとも言われています。
これは男女の皮下組織の構造の違いによる可能性が指摘されています。
2008年に発表されたセルライトに関する研究論文によると、男性は皮下組織のコラーゲン繊維束が斜めに交差しているのに対し、女性は皮膚に対し垂直なアーチ状になっているため、より皮膚表面に凹凸があらわれやすいということです。

つまり、女性は男性に比べて太った時に皮膚の表面がボコボコしやすい皮下構造をしているのです。
このため、男性はよっぽどの肥満にならなければセルライトがあらわれないのに対し、女性はそれほど太っていなくてもセルライトができてしまうことが珍しくありません。
また妊娠によるホルモン変化の影響によってもセルライトができやすくなる可能性が指摘されており、セルライトは特に女性を悩ませやすいものであると言えるでしょう。
セルフケアやエステでセルライトは無くならない
セルライト対策として広く知られているものとして、以下の様なものが上げられるでしょう。
- セルフマッサージ
- ストレッチ
- 半身浴
- エステでのマッサージ
- レチノールやカフェイン入りのクリーム
しかし実際のところ、これらの対策に医学的な根拠はなく、また根本的な改善が期待できるものもありません。
特にマッサージは「脂肪を潰す」と表現されますが、物理的な圧力を加えることで脂肪細胞が小さくなったり無くなったりすることはありません。
うっ血や浮腫が軽減されることで一時的にセルライトが緩和されたように見えるかもしれませんが、すぐに元に戻ってしまうため根本的な解決にはつながらず、またマッサージの摩擦や圧力によるアザや色素沈着、肌へのダメージによるデメリットの方が大きくなることも考えられます。
こういったセルフケアやエステによってセルライトが解消されることはありません。
セルライトをなくす方法
体脂肪率を下げることでセルライトの改善が期待できる
セルライトの根治は難しいものの、症状を緩和するために有効と考えられるのが体脂肪率を落とすことを意識したダイエットです。
女性は脂肪が肥大した時に皮膚の表面に凸凹があらわれやすい皮下組織の構造をしていると解説しましたが、ダイエットによって体脂肪率が下がり、脂肪細胞のサイズが小さくなれば凹凸が軽減される場合があります。
そのためには体重を減らすだけでなく、筋肉をなるべく残しながら脂肪中心に落とすダイエットを行う必要があります。
具体的には、食事制限でカロリー収支をマイナスにするだけでなく、筋トレもあわせて行うようにしましょう。
筋トレを行うことで筋肉量が維持されるため、食事制限のみのダイエットよりも体脂肪率が落ちやすくなります。
量を維持することが非常に重要というわけです。
セルライトは脂肪細胞の肥大による影響が大きいと考えられているため、単純に体重を落とすだけでなく、体脂肪を中心に落とすダイエットによって症状を軽減できる可能性があります。
軽度のセルライトは医療ダイエット施術で解消できる可能性がある
セルライトは「①脂肪細胞が肥大する(太る)→②毛細血管の圧迫によりうっ血や浮腫みが起こる→③周辺組織が繊維化する(硬くなる)」という変化をたどると考えられています。
脂肪細胞が肥大しているだけであったり、繊維化の程度が軽い場合には、脂肪冷却、ハイフ、脂肪吸引といった医療ダイエット施術によって脂肪細胞を取り除き、セルライトが発生している部分をボリュームダウンさせることで短期的にセルライトを改善できる場合があります。
線維化してしまったセルライトの治療は難しい
セルライトは「①脂肪細胞が肥大する(太る)→②毛細血管の圧迫によりうっ血や浮腫みが起こる→③周辺組織が繊維化する(硬くなる)」という変化をたどると考えられています。
ここで注意が必要なこととして、体脂肪率を下げるダイエットによって改善が期待しやすいのは、繊維化が起こっていない状態のセルライトということです。
軽度のセルライトは肌を押さえたり直立した場合のみに凸凹があらわれますが、繊維化が進むと常に凹凸が肌表面にあらわれ、重度になるとつまむだけで痛みを感じる場合もあります。
こうなってしまうと痩せてもセルライトが改善されづらく、脂肪吸引などの美容医療施術を行っても解消できない可能性があります。
セルライトはなるべく長期間放置せずに早期にダイエットを行うことが重要と言えるでしょう。
またデスクワークなどによって浮腫みやすい生活を送っている方も、同様に浮腫み対策などを行うことをおすすめします。
セルライトの治療方法は確立されていない
医療の分野においても、セルライトの完全な治療方法はまだ確立されていません。
低侵襲レーザーや超音波を活用した施術などによる症状の改善が示唆されていますが、まだまだ研究内容が不十分という状況です。
美容医療の分野でセルライト治療の方法として挙げられることが多い脂肪吸引を行ってもセルライトが改善されないケースは多く、セルライトを確実かつ完全になくす方法は現状では存在しないといえます。
まとめ
セルライトについて解説を行いました。
セルライトは元々エステなどの分野で使われ始めた言葉で、医学的な定義はなく、研究も進んでいない状況です。
マッサージやエステといった世の中に出回っている治療法のほとんどには根拠が無く、実際に大きな改善も期待できません。
また医療の分野においても明確な治療法はまだ確立されていない状況です。
脂肪細胞の肥大が関連している可能性が高いという見立てから、体脂肪率を下げることを重視したダイエット方法はセルライトを改善できる可能性があるため、セルライトにお悩みの方は筋トレと食事制限を組み合わせたダイエットに取り組んでみてはいかがでしょうか。