戸原 玄 歯科医師の経歴
1997年3月 東京科学大学(旧 東京医科歯科大学) 歯学部 卒業
2002年3月 東京科学大学(旧 東京医科歯科大学) 博士課程 修了(歯学博士取得)
1999年4月 – 2000年8月 藤田医科大学(旧 藤田保健衛生大学)医学部 リハビリテーション医学講座 研究生
2001年4月 – 2002年3月 ジョンズホプキンス大学 医学部 リハビリテーション医学講座 研究生
2003年4月 – 2005年3月 東京科学大学(旧 東京医科歯科大学)歯学部附属病院 総合診療科 スペシャルケア外来 医員(歯病)
2005年4月 – 2007年12月 東京科学大学(旧 東京医科歯科大学)大学院医歯学総合研究科 老化制御学講座 高齢者歯科学 助教
2008年 – 2013年 日本大学 歯学部 摂食機能療法学講座 准教授
2013年7月 – 2020年3月 東京科学大学(旧 東京医科歯科大学)大学院医歯学総合研究科 老化制御学講座 高齢者歯科学 准教授
2020年4月 – 現在 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 老化制御学講座 摂食嚥下リハビリテーション学分野 教授
2020年5月 – 2020年9月 東京科学大学(旧 東京医科歯科大学)歯学部附属病院 総合診療科 スペシャルケア外来 教授
オンライン診療の新たな役割とは?
オンライン診療の必要性とCOVID-19
新型コロナウイルスの感染拡大によって介護保険施設では対面での訪問診療・訪問看護が難しくなり、オンライン診療の導入が急務となりました。
オンライン診療は、医師が患者と直接対面せずに診療を行うため、感染リスクを抑えつつ医療提供を継続できる重要な手段となっています。
感染対策と患者ケアの両立において、オンライン診療が重要な役割を担っているといえます。
オンライン診療による介護施設支援の挑戦
オンライン診療は訪問診療の代替として活用されており、介護施設内の口腔・栄養関連サービスが行われています。
医師はビデオ通話を通じて患者の診察を行い、介護施設のスタッフと連携しながら、従来の訪問診療と遜色のないケアを提供しています。
オンライン診療による支援活動は介護施設にとって有益であり、同時に課題も生じていますが、これらに対応する取り組みも進んでいます。
医師によるオンライン診療を活用したミールラウンドの実施
オンライン診療を活用したミールラウンドとは?その意義と目的
ミールラウンドは、医師・栄養士・介護職員が協力して食事の様子を観察し、食事形態や食事介助の必要性を確認する取り組みです。
これにより、食事中の嚥下機能や食事意欲などを多角的に把握し、より質の高い栄養ケア・マネジメントを行うことができます。
オンライン診療を行うことで、対面での診療が困難な状況でもミールラウンドの意義が生かされているといえます。
オンライン診療によるミールラウンドの利点と課題
オンライン診療におけるミールラウンドでは、ビデオ通話を活用して口腔内の状態や嚥下機能を観察することで、患者の栄養状態を評価します。
しかし、オンライン診療では細かな観察が難しい場合もあり、特に頸部聴診法や口腔内の詳細な検査など、対面診療での評価と比較して困難な面があることが課題となっています。
今後は、頸部聴診用のマイクや口腔内カメラなどの技術の導入が必要とされています。
以下の表は、各項目について対面診療・電話診療と比較したものです。
診療方法 | 義歯の状態確認 | 口腔観察 | 嚥下テスト | 多職種連携の可否 | 実施頻度 (%) | 患者満足度 (5段階) | 平均診療時間 (分) | 平均診療コスト (円) |
対面診療 | ○ | ○ | ○ | 可 | 100 | 4.8 | 30 | 5,000 |
オンライン診療 | △ | △ | ○ | 可 | 75 | 4.3 | 20 | 3,000 |
電話診療 | × | × | × | 否 | 50 | 3.5 | 10 | 1,500 |
オンライン診療の導入とシステム構築
オンライン診療における情報通信機器の選定と活用
オンライン診療の実施には、セキュリティが確保された高性能な情報通信機器が不可欠です。
ビデオ通話の安定性や患者のプライバシー・個人情報保護を考慮したシステムの構築が必要とされており、通信環境やデバイスの選定も重要なポイントとなっています。
オンライン診療においては、このような要件を満たす通信機器とシステムが選ばれて使用されています。
オンライン診療のYaDocシステムを用いた実例
「YaDocシステム」は遠隔での歯科診療にも利用されており、オンライン診療の一例として有効であるとされています。
このシステムを用いて遠隔で診療が行われ、診療の記録や患者情報の共有が適切に管理されています。
こうしてオンライン診療のための準備やプロセスが整えられており、実際の医療現場での有用性が示されています。
オンライン診療での多職種連携と情報共有
オンライン診療での多職種カンファレンスの実施
オンライン診療が機能するためには、医師・栄養士・看護師・介護職員など多職種が連携することが必要不可欠です。
これらの職種がオンラインで情報をリアルタイムに共有することで、施設入所者に一貫したケアを提供し、継続的に支援することが可能になっています。
特に、多職種がそれぞれの専門分野から意見を交わし合うことで、より的確なケアプランが作成され、患者の健康管理が質の高いものになります。
この多職種カンファレンスの実施によって、オンライン診療を通じた包括的ケアが実現されるといえます。
オンライン診療での情報伝達と患者サポートの工夫
オンライン診療では画面越しに得られる情報に限界があるため、施設のスタッフがサポート役となり、医師の指示に従って診断を支援する役割を担っています。
画面外の情報や日常観察によって得られた情報を補足することで、医師が正確な診断を行うためのサポートがなされています。
例えば、嚥下機能の観察や食事時の姿勢、表情といった細やかな情報を医師に伝えることで、診断精度が向上し、より効果的な治療方針が立てられます。
このように、施設スタッフのサポートによってオンライン診療の欠点を補い、より包括的に患者を支援する体制が整えられています。
オンライン診療における情報共有の工夫と信頼関係の構築
オンライン診療では、対面診療とは異なり、患者と医療スタッフとのコミュニケーションが画面越しで行われるため、適切な情報共有がより一層重要です。
医師は、患者や家族に対しても分かりやすく説明することを心がけ、必要に応じて資料や画面共有を活用することで理解を深めてもらえるよう努めています。
さらに、診療における信頼関係の構築を図るため、医師や各スタッフは丁寧な説明と親しみやすい対応を心がけ、患者が安心して相談できる雰囲気を作り出しています。
このような工夫により、患者自身の体調管理や生活習慣の改善に対する意識が高まり、オンライン診療がより効果的なものとなっています。
オンライン診療がもたらす可能性
オンライン診療の普及と課題解決への期待
オンライン診療は、医療資源が限られた地域や過疎地医療、また通院が困難な患者の負担軽減など、大いに貢献できることが期待されています。
感染症対策に加え、医療の地域格差の是正や診療アクセスの向上に向け、オンライン診療の需要は今後ますます増加する見込みです。
今後のオンライン診療に必要な法整備と支援体制
オンライン診療の普及には、法整備や診療報酬制度の見直しが必要です。
厚生労働省のガイドラインに基づき、診療報酬の改定やシステムの整備が進められており、将来的にはオンライン診療が医療保険にも対応可能になることが期待されています。
そのため、今後のオンライン診療の発展に向けた法制度の整備が求められています。