GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)は、30または31アミノ酸から成る「インクレチン」と呼ばれるホルモンの一種で、プログルカゴンペプチドの組織特異的な翻訳後修飾で生成されます。
初期生成物であるGLP-1 (1–37)は、N末端切断およびC末端アミド化を経て、GLP-1 (7–36) アミドとGLP-1 (7–37)の2つの生物学的に活性な型に変換されます。
これらは等価な生理活性を持ちますが、GLP-1 (7–36) アミドが主にヒトで優勢です。
GLP-1には、活性型のGLP-1 (7-36) アミドとその代謝産物であるGLP-1 (9-36) アミドがあります。
GLP-1は、アミノ酸配列の13–20および24–35の領域にαヘリックス構造を持っています。
αヘリックスは、ペプチドの全体構造を安定させるため、GLP-1受容体(GLP-1R)に対する高い親和性があります。
αヘリックス構造はGLP-1受容体の細胞外ドメインとの結合を強化し、受容体の活性化を効率的に行うために必要な分子間相互作用を形成します。
GLP-1は、主に小腸の腸内分泌L細胞や脳幹の孤束核内の一部のニューロンから、食事摂取に応じて分泌されます。
本記事では、GLP-1の特性、及び関連する研究について詳しく紹介します。
GLP-1 (7-36) アミドの特性
分子式 | C149H226N40O45 |
分子量 | 3,289.65 |
外観 | 物理的白色凍結乾燥固体 |
イオン | カウンターTFA (トリフルオロ酢酸) |
溶解性 | 20% アセトニトリル/水 において3 mg/mlまで溶解 |
保存方法 | -20°Cで乾燥保存 |
GLP-1 (7-36) アミドは活性型のホルモンであり、インスリン分泌を促進し、グルカゴン分泌を抑制することで血糖値を下げる作用があります。
GLP-1 (7-36) アミドのアミノ酸組成データは、以下の通りです。
アミノ酸 | 理論値 | 実測値 |
---|---|---|
Ala | 4.00 | 4.00 |
Arg | 1.00 | 1.13 |
Asx | 1.00 | 1.00 |
Glx | 4.00 | 3.89 |
Gly | 3.00 | 3.08 |
His | 1.00 | 0.98 |
Ile | 1.00 | 0.95 |
Leu | 2.00 | 2.00 |
Lys | 2.00 | 1.95 |
Phe | 2.00 | 1.99 |
Pro | なし | 記載なし |
Ser | 3.00 | 2.61 |
Thr | 2.00 | 2.00 |
Trp | 1.00 | 検出 |
Tyr | 1.00 | 0.98 |
Val | 2.00 | 1.91 |
- Net Peptide Content: 79.8%(残りはカウンターイオンや残留水分)
- 一部のアミノ酸(例: Pro)の情報は省略されているがデータは理論値と実測値を比較
また、胃内容排出を遅らせ、満腹感を高めることで食欲を抑制し、体重管理にも貢献します。
この特性により、GLP-1 (7-36) アミドは2型糖尿病治療薬として使用されるほか、肥満治療のための薬剤としても利用されています。
GLP-1 (9-36) アミドの特性
分子式 | C140H214N36O43 |
分子量 | 3,089.44 |
外観 | 物理的白色凍結乾燥固体 |
イオン | カウンターTFA (トリフルオロ酢酸) |
溶解性 | 20% アセトニトリル/水 において3 mg/mlまで溶解 |
保存方法 | -20°Cで乾燥保存 |
GLP-1 (9-36) アミドは、GLP-1 (7-36) アミドがジペプチジルペプチダーゼ-4 (DPP-4) によって切断されて生成される代謝産物です。
そのため、DPP-4阻害薬の効果を評価するためのモデルとして使用されることがあります。
DPP-4阻害薬はGLP-1の分解を防ぐことで、活性型GLP-1の作用を持続させる薬です。
このペプチドは、GLP-1受容体に対する拮抗薬として作用するため、インスリン分泌促進効果はほとんどありません。
しかし、GLP-1 (9-36) アミドは肝臓でのグルコース生成を抑制する作用や、心血管疾患の予防効果があるとされており、研究者たちはその潜在的な利点に注目しています。
以下にGLP-1 (9-36) アミドの主なアミノ酸の、組成データを示します。
アミノ酸 | 理論値 | 実測値 |
---|---|---|
Ala | 3.00 | 2.97 |
Arg | 1.00 | 1.07 |
Asx | 1.00 | 1.00 |
Glx | 4.00 | 3.95 |
Gly | 3.00 | 3.08 |
Ile | 1.00 | 0.80 |
Leu | 2.00 | 1.88 |
Lys | 2.00 | 1.94 |
Phe | 2.00 | 1.81 |
Ser | 3.00 | 2.95 |
Thr | 2.00 | 2.10 |
Tyr | 1.00 | 0.98 |
Val | 2.00 | 1.87 |
GLP-1 (9-36) アミドは、肝臓でのグルコース生成を抑制する作用があることが示されており、血糖コントロールの仕組みを理解するための研究に用いられています。
GLP-1 (9-36)アミドはインスリン分泌の刺激作用がGLP-1 (7-36)アミドよりも弱いとされていますが、血糖調節の効果は報告されています。
また、GLP-1 (9-36) アミドは心血管系に対する保護効果がある可能性があるとされており、心血管疾患の治療において心臓の保護や血管機能の改善に関連する研究が行われています。
GLP-1 (9-36) アミドは研究用途専用であり、医療や獣医学の用途には使用できません。
ペプチドは溶液状態で不安定になりやすいため、短期間での使用が推奨されます。
溶解後は-20°Cで保存し、使用する際には無菌条件を確保するか、バクテリア汚染防止のため0.2 µmフィルターを使用することが望ましいです。
GLP-1受容体作動薬の分類と構造について
GLP-1受容体作動薬は、「ヒトGLP-1骨格を基にした薬剤」と「エキセナチド(Exendin-4)骨格を基にした薬剤」の2つに分類されます。
リラグルチドやセマグルチドはヒトGLP-1骨格を基にした薬剤であり、エキセナチドはエキセナチド骨格に基づいています。
また、GLP-1とGIP(グルコース依存性インスリン分泌促進ポリペプチド)の二重作用を持つチルゼパチドなど、新しい薬剤も注目されています。
GLP-1受容体作動薬の副作用と注意事項について
GLP-1受容体作動薬は胃の運動を抑制するため、副作用として主に以下のものが挙げられます。
吐き気・嘔吐・下痢・軽度の動悸・頭痛・消化不良
こういった症状は、薬剤が中枢神経系にも作用し、特に延髄の嘔吐中枢を刺激するため生じやすくなります。
特に、胃腸の不調が初期段階でよく見られますが、これらは通常一過性です。
重篤な副作用として、膵炎(まれに致命的な壊死性膵炎を含む)があり、膵炎の既往歴がある患者は慎重に使用する必要があります。
GLP-1は膵臓のα細胞とβ細胞に作用し、インスリン分泌を促進しつつグルカゴン分泌を抑制します。
しかし、膵組織に対するGLP-1受容体の過度な刺激が、膵臓の炎症反応・膵細胞のストレスを引き起こす可能性があります。
また、GLP-1受容体の活性化が膵酵素の異常な分泌を促すため、膵管の閉塞・膵臓自体の組織破壊につながり、最終的に膵炎が発生することが考えられます。
また、動物モデルで甲状腺C細胞への影響が観察されていることから、多発性内分泌腺腫症2型(MEN 2)や甲状腺髄様がんの家族歴を有する患者には禁忌です。
GLP-1受容体作動薬の個人輸入について
GLP-1受容体作動薬は、近年ダイエット目的での使用が増えたことにより在庫逼迫が生じています。そのため、適応を有している2型糖尿病患者への供給が滞る可能性が生じています。
1.GLP-1受容体作動薬について、返品が生じないよう、買い込みは厳に控えていただき、当面の必要量に見合う量のみの購入をお願いしたいこと。
2.GLP-1受容体作動薬については、これを真に必要とする2型糖尿病の患者への供給が滞ることのないよう、適正使用に努めていただきたいこと。
3.医薬品卸売販売業者におかれては、上記の趣旨を理解いただいた上で、糖尿病治療を行っている医療機関、及び薬局へのGLP-1受容体作動薬の優先的な供給をお願いしたいこと。
引用:GLP-1 受容体作動薬の在庫逼迫に伴う協力依頼(厚生労働省)
こういった背景もあり、GLP-1を個人輸入する消費者が増加しています。
買い込みができる上に、クリニックで処方を受けるよりも安価で薬が手に入るというメリットがありますが、反面デメリットがかなり大きいです。
GLP-1受容体作動薬の個人輸入のデメリット 副作用のリスク
医薬品を個人輸入する際には、医師の監督がないため使用の際に危険性があります。
また、GLP-1は投与量を自分で決定することができるため、自己判断による副作用重篤化のリスクがあります。
禁忌にあたる患者もいるため、自己判断でGLP-1受容体作動薬の服薬を始めることは非常に危険です。
中には、偽造品や品質管理が十分でない医薬品を販売している業者もいるため注意が必要です。
日本国内で正規に流通している医薬品、化粧品や医療機器などは、医薬品医療機器等法に基づいて品質、有効性及び安全性の確認がなされていますが、個人輸入される外国製品にそのような保証はありません。
引用:医薬品等を海外から購入しようとされる方へ-厚生労働省
個人輸入した医薬品は、医薬品副作用救済制度の対象外であるため、副作用による治療費が発生した際には負担が大きくなる場合があります。
安くGLP-1を手に入れようとして薬を個人輸入すると、後から後悔することもあります。